特定課題研究(修論)が終り、卒業を迎える『今』を聞く(後編)

 1年間のMOT生活の締めくくりになる『特定課題研究』(修論発表)。12期生の沼田さんのご厚意により、発表当日の密着取材と、発表を終えた『今』の気持ちをインタビューしました。


<修論(特定課題研究)発表が終えたばかりの『今』の気持ちを教えてください>

 秋からから始まる研究でテーマを決めるのに2か月かかり、それから1か月間で中身を詰め込んで今日に臨んだので、ものすごい達成感です。

 同時に「普通ではあり得なかった生活が終わってしまうんだなあ」という寂しさのような気持ちを感じます。

<今日、発表した修論のテーマはどうやって決めましたか?入学前からのテーマでしたか?>

 入学した時は、全く修論のテーマを考えてはいませんでした。授業を受けながら『自分らしさが出せるテーマは何か』を考えました。授業で得た手法と自分の興味のマッチングを考えました。

会社派遣ではなく自腹で大学院に来ましたので、特に会社で必要という視点に縛られずに、自分らしさが出るテーマを考えました。

<入学時のお話を立ち返ってお伺いします。MOTへの修学を考えられたきっかけは?>

 大学生時代の母校(東工大)に、MOTコースがありました。大学生時代に授業に参加したのですが、社会人と学生が語り合えることに刺激を受けました。MBAと違ってMOTは「技術」という共通の軸があり、誰でも本音で話せるような雰囲気が気に入っていました。いつか本格的に技術経営を学びたい、とずっと思っていました。

<母校のMOTコースではなく、日本工業大学のMOTコースを選んだ理由は?>

 インターネットでの情報収集で重視したのは、『短期間で卒業できる』点でした。時間が限られている中で早く次のステップに進みたいというのが理由です。

 また、日本工業大学MOTのキーワードの一つである『中小企業』が、私には刺さりました。私は自動車メーカーに勤めていますが、大企業で過ごすキャリアの中で、組織も自分自身も『大企業病』に侵されているのではという危機感を感じていました。中小企業のエッセンスを自分に取り込みたい。中小企業経営者や社員と語り合いたいと考えました。

<大企業(沼田さん)の目から見た中小企業の良さは? 中小企業の良さを自分のビジネスに取り込めそうですか?>

 大企業の社員は死んだ魚ですが、日本工大で触れた中小企業の皆さんは、みんな生き生きしていて活力を貰えました。悩みのとらえ方、主体性も大きく違います。会社での問題意識を『社内の他人事』にせず、自分の事の様に考えている方が多くいました。

 中小企業的なスピード感や問題意識は、是非自分のビジネスに取り入れたいと思います。自分『達』の仕事のやり方はこのままでよいのか?という危機感を持ちました。大きな組織でも『自分事』感を持たないとお行けないと思います。

 卒業後、来月早々にタイに赴任し、アジア・オセアニアマーケットのサービスエンジニア部門に配属されます。これからの職務では、組織的には少数精鋭になり、一人一人の権限や責任が重くなります。プレーヤーとしてスピード感や当事者意識を持ちやすい環境になりますし、成功要因になるのではと思っています。

<入学した最初の感想、特にクラスメートへの感想は?>

 科目履修制度を利用して、4月入学の少し前から大学に通い始めたのですが、4月に12期生と合流した時には、一癖も二癖もあるユニークなクラスメートに最初は呑まれました。

 しかし、12期生の壁が取れ、仲良くなるのはとても早かったと思います。これは11期生から「MOA=Management of Alchol」の重要性や、日本工大MOTのノリを知っていたことが大きかったと思います。私以外にも幾人かの12期生が、科目履修制度で11期生の時期から通学していましたし、11期生も卒業後の無料聴講制度を利用して同じクラスで勉強していましたので、MOTコースの遺伝子がスムーズに12期生に伝わったと思います。

 授業内外のコミュニケーションは、入学直後から始まっていました。入学直後にキャンパス内で懇親会を行ったので、仲良くなるのは早かったです。

<12期生は、グループウェアを自分たちで導入して、効率的に授業運営やコミュニケーションが図れるように工夫されていましたね、こういった試みに教員も乗り入れて授業付加価値を高めるのは、とても良い事だったと思います>

 11期の授業を聴講している段階から、もっと効率的に学ぶためにグループウェアがあればいいのに、と話し合っていました。11期生はコミュニケーションアプリの活用のみで、グループウェアで授業レポートなどを共有する仕組みはありませんでした。

 4月に入ってすぐ、IT業界のクラスメートがサイボウズのフリー版を設定してくれました。そこで授業に関する議論や授業レポート等の情報共有を進め、その効果を見て先生方も乗っかってきてくれました。大学から与えられる仕組みだけではなく、自分達で1年間の付加価値を高めるような仕組みを創れたと思います。

 思い返してみたら、私自身の卒論のテーマである『チェンジマネジメント』の一環を、クラスメートと一緒に実施できたと思います。

<授業や先生で印象に残っているのは?>

 どの授業も面白すぎて、そもそもつまらない授業がありませんでした。どの授業も工夫が凝らされていました。先生方は我々生徒の事を常に思ってくださいました。学習しやすい環境の提供や、コミュニケーションを取りやすいように配慮してくれたことに感謝しています。学生からのコメントをふまえて授業の改善やフィードバックをしてくれるので、双方向のコミュニケーションをとることが出来ました。

 キャンパスは勉強しやすく、居心地がよく、アットホームな雰囲気でした。ここに来れば常に仲間もいるし先生もいる、という環境は凄く良かったです。『暖かい家』といった感じでした。

先生とのオフレコトークも面白く、濃かったです。ビジネスの話からプライベートの話まで、学校の敷地を一歩出ると全く別の顔を見せてくれました。

 授業はどれも楽しかったですが、特に印象に残っているのは上原先生の『ビジネスプラン』の授業です。苦労しましたが面白かったです。修論のテーマの一つとしたデザインシンキングは上原先生の授業がきっかけになりました。

 

<反対に、つらかった/大変だったことは?>

 私は個人で入学しましたので、仕事との兼ね合いが大変でした。朝7時に会社に行き、2時間前倒しにして仕事をしました。仕事の調整も大変ですし、授業後に飲むと翌日がつらい。けど飲みました。ありがたいことに、自分自身の頑張りを見て、周囲が「こいつを助けてやろう」という雰囲気になり、理解や協力を頂くことが大きな助けになりました。会社の後、大学院に来て宿題をこなして寝ると一日が終わる、という日も続きました。しかし、精いっぱい頑張る1年間で、確実に自信がつきました。

<来季の13期生にアドバイスはありますか?>

 一年間で全てを詰め込み、学ぶことは多いです。時間的な制約も厳しいと思います。その中で精一杯やれば自信にもつながるし、クラスメートとの連帯感も生まれます。思い切って一年間を楽しんでいただきたいと思います、夜の飲み会も含めて。仲間と助け合い、一年限定だ、と思えば何とかなるものです。早いうちにクラスメートと仲良くなるのがコツです。

<1年間、一緒に勉強した12期生へのメッセージは?>

 修論発表を終えたばかりの今日(3月11日)の時点では、まだ卒業するという実感がありません。まだまこの時間が続くんじゃないかという感じがあるし、続けたいなと思います。一年間、つらかった事もありますが、一緒に乗り越えた仲間なので、これからも人間関係が続けばいいなと思います。ただの友達ではなく『戦友』といった感じです。本当の達成感と寂しさは、一週間後の卒業式に訪れるのかもしれない、と思います。