金型業界の認定制度『金型マスター』 日本工大MOTが協力 『何故、今、人材育成が必要か?』をキーマンに聞く

 本年(平成29年)より、一般社団法人 日本金型工業会による、人材認定制度『金型マスター』が始まります。

 この認定制度は、『リーダーシップを発揮して生産現場を統率し、成果を生み出す力を持つ人材』の育成を行い、金型業界の次世代リーダー像を明確にすることを目的としています。

 日本工大MOTではこの趣旨に賛同し、技術経営(MOT)の講義に小田・浪江・萬代・清水教授が協力しています。

 業界団体が、『技術+経営マネジメントが理解できる人材を育成・認定する』制度は珍しいものです。『何故、今、金型業界で人材育成が必要か?』を金型工業会における本制度の仕掛人の一人でもある、小出 悟副会長(株式会社小出製作所)に伺いました。


『日本独自の価値』を追求すると、技術力+マネジメント力を兼ね備えた人材が必要

 金型業界独自の人材認定制度を持ちたいという思いは以前からあったのですが、制度の検討が本格化したのは、平成26年頃です。制度設計の背景には、ジャパンブランドとしての『日本の金型』において、『何が日本独自なのか?』という事をもう一度明らかにする必要性を感じたからです。

 高度成長期から現在に至るまで、日本の金型は世界でも稀な製造技術・品質を誇っています。しかし、CAD/CAMや製造機械の進歩により、出来上がる金型の精度等では差がつきにくくなってきました。今後も機械に置き換えられない部分は何だろう?と考える過程で、デザイン能力やアッセンブリ能力、提案能力等、『ヒト』が重要な役割を果たす部分の再評価を進めました。

 金型業界はグローバル化の波にさらされています。会社の、あるいは日本の金型の代表として、海外に金型を展開・販売していく際には、設計技術や加工技術だけでは不十分です。金型を利用するユーザーにとっての最終目的は、金型自体ではなく『量産』であり、金型業界にはそのプロセスを見据えたマネジメント能力が必要になります。更に、社内外で次世代のリーダを育成していくためには、教える力やリーダーシップも必要になります。こうしたテーマを実現するために、『技術認定』+『マネジメント教育』をいう2本の柱で、金型マスター制度をデザインしました。

多くのハードルを越えスタート。これから目指していきたい人材育成は?

(写真は小出副会長)

 関係者のご尽力により、おかげさまで金型マスターの第一期教育が始まります。今後は認定者のクオリティをどのように確保・保障するかが課題になります。本制度は業界として長期的な視野で取り組みたいと考えています。まずはそのスタート・第一歩を踏み出したばかりです。特にマネジメント教育は、一層の深耕が必要になります。


 今回、初認定を受けられる方々は、年を追って様々経験を積み、さらに有意な、業界を代表するような人材になってほしいと考えています。自分自身が習得したものを自社の荒廃や金型業界にフィードバックしていってほしいです。ゆくゆくは業界のリーダー・イノベーターとして、金型マスターの指導役として成長するような人材が輩出できればと考えています。