ドラマ『人は見た目が100パーセント』に登場したロボット『Nicotto(ニコット)』を訪ねる

 最近、最終回を迎えた、フジテレビのドラマ、『人は見た目が100パーセント』。

主役の城之内純(桐谷美玲)が同居しているロボットは、日本工業大学の教育用ロボット『nicotto(ニコット)』です。

このニコット、6/24(土)・6/25(日)に、JR秋葉原駅構内のイベントスペースでご覧いただけます。

 宮代キャンパスの創造システム工学科の中里裕一教授をお邪魔し、ニコットやドラマの裏話について伺ってきました。

聞き手・文章 : 筒井 研多(MOT3回生)



Nicotto(ニコット)とは?

 ニコットのベースとなったのは、株式会社ZMP が開発し、世界最初の量産・市販されたヒューマノイド型コミュニケーションロボットである『nuvo』です。このnuvoを核として機能追加や様々な用途開発が行える、教育市場向けにカスタマイズした学習用ロボットが『e-nuvo』です。日本工大ではe-nuvoを利用した教育プログラムを約10年、展開しています。ドラマに登場したニコットはe-nuvoをベースに、スケールアップしたワンオフモデルです。

 ドラマでは掃除のお手伝いなどで愛嬌を見せていたニコットですが、本来は『教師ロボット』としての役割を果たすことを目標としたものです。人とコミュニケーションをとるには、ある程度のサイズが必要となり、開発を行いました。


 ニコットのロボットとしての特徴は、内骨格型・二足歩行のコミュニケーションロボットである事です。一世を風靡したホンダの『ASIMO』は外骨格型のロボットですが、内骨格型のニコットは、人間の様に体幹の中心で体重を支える構造をしています。そのため、外観を変更しやすく、視覚効果や美的効果を実機を使って確認できるのが特徴です。ニコットもデザインアイディアは学生から募集を行いました。教育向けにセンサーや機能追加が行いやすいのも特徴です。

 ニコットの外装は当時(2009年)では珍しい、3Dプリンターを利用したワンオフモデルです。当時は3Dプリンターに関する認知も進んでいない中、軽量化と強度を両立するために設計を自動車の外装デザインの会社に協力を仰ぎ、実現しました。



撮影秘話

(写真はドラマの台本)

 撮影現場では、大学の教員が撮影に付き添い、監督の希望に合わせて調整や操作を行いました。その中でも、最も現場で活躍されたのが、秋元俊成准教授です。ドラマのスタッフロールを注意深くご覧になっていただくと、クレジットに秋元先生の名前を確認することができます。



中里教授の目指す『ロボットの未来』

 漠然と、『ロボット=成長分野』と言われていますが、その規模はどの程度なのでしょうか。現在、約1.5兆円といわれるロボットの市場は、内閣の日本再興戦略2016において第四次産業革命の一角に位置付けられ、(IoTやビックデータなどと合わせ)30兆円市場への成長を目指しています。

 その中で、特に成長が期待される分野が医療や福祉分野等、住環境の中で人に寄り添うロボットです。これはロボット全体のマーケットの50%を占めるようになると考えられています。

 技術の『ブーム』と『トレンド』は異なります。今後は一過性のブームではなく、ニーズに応じた『トレンド』として歩行ロボットを見据えていかなければいけないと思います。インターネット分野では日本は後れを取りがちですが、ロボット分野は今なお最先端を走っています。その一方で米国・DARPAのロボットコンテストのように、災害対応や軍事目的など、国家戦略レベルでの国際競争が始まっています。今後のロボット開発は、第四次産業革命を担えるだけの『実用性』を確保するために、ロボット技術をいかに他の技術やマーケットと組み合わせていくかが重要になるでしょう。

 日本工業大学では平成29年に3学部体制への学科再編を予定しており、その中でロボティクス学科の新設が予定されています。ロボットの開発は様々な分野での専門知識が必要になり、これは一人の学生が到底網羅できるものではありません。そこで、自分自身の強い専門分野に加えて、専門分野外の技術に関しては積極的に他分野の人と繋がりを持ち、創造性を発揮できる人材を育成する必要があります。我々はこれを『クロスリンク型人材』と定義づけ、コミュニケーション能力や主体性などを学生が獲得できるような教育プログラムを展開したいと思います。これは企業が求める能力ともマッチすると考えています。


取材を終えて

 MOTでも3Dプリンター研究会等の活動を通じてロボットマーケットについて調査をしており、秋葉原のホビーロボットの見学等も行っています。今回は秋葉原駅構内という、神田キャンパスからも近い場所でのイベントですので、是非見に行きたいと思っています。また、ニコットの外装が3Dプリンターの初期の活用モデルであるなど、我々が知らなかった事実を色々と知ることが出来、とても興味深い時間を頂きました。

 その中でも特に感銘を受けたのが、他分野の人と繋がりを構築できる人を育成しようという姿勢です。MOTのカリキュラムでも中堅・中小企業の外部連携を積極的に進めており、卒業生企業同士で連携するような事例やジョイントベンチャーによる製品開発などの事例も多くあります。ロボティクス学科と専門職大学院の、相互の知見を持ち寄れば、『何か面白いこと』ができるのでは、とワクワクした思いで宮代キャンパスを後にしました。

 展示期間の6/24(土)には、SMEセミナーの第2回『デジタル革命の主戦場はリアル/SMEの世界に移行~ ビジネスイノベーションを駆動するIT活用』が開催されます。6/24の秋葉原駅での展示時間は13:00~17:00の予定との事。参加される方は、是非Nicottoをご覧になってから、神田キャンパスへお越しください。(岩本町から都営線で神保町へ移動するのが便利です)